握り鋏の研ぎ方・調整(糸切り鋏・和鋏)
握り鋏(糸切り鋏・和鋏)の研ぎ方や調整について書かれているサイトがほとんど無かったので書いてみようと思います。
まず切れなくなった鋏を見てみましょう。
この鋏の場合、刃先の裏側に髪の毛一本分くらいの光っている部分があります。
この磨耗して光っている部分を研いで削り落とすことによって鋏の切れ味を蘇らせることが出来ます。
欠けがあったり、長く使っていて磨耗が激しい場合は削り落とす部分が増えます。
次に握り鋏を研ぐ準備をします。写真の様に刃を手前に引いて交差させます。
そのまま強く握ります。
この交差させる幅が少ないと研ぐ時に峰が邪魔になり研ぎ辛くなるので注意が必要です。
しっかり交差させたら、動かないようにタコ糸等で巻いて固定します。
準備が出来たら研ぎます。
刃を表から見て光っている1mm位の段になっている小刃の部分を研ぎます。
欠けがある場合や磨耗が激しく無ければ中砥石で研ぎます。
番手としては1000〜1500くらいです。
仕上げ砥石のみで研ぐと書かれているサイトもありますが、鋏を研ぐのに慣れてない方は時間かけて研ぐと研ぎムラがでますし刃が丸まりやすいです、慣れている方でしたら仕上げ砥石で無駄に時間をかけて研ぐ必要もないので、どちらにしても中砥石で研ぐことをお勧め致します。
品質が高い荒砥石を持っていて、技術があり、刃の状態を正確に判断できる方でしたら、荒砥石から研ぎ始めでも構いません。
刃の構えは真横ではなく少し斜めの方が角度がブレにくく、砥石に引っかからずに研ぎやすいです。
刃の角度はメーカーによって違いますが写真を参考にして研ぎましょう。
垂直まではいきませんが思っているよりも立てて研ぎます。
刃を立てて研いでると本当にこの角度で切れるようになるのか心配になると思いますが、変なはなし垂直よりほんの僅かにでも角度がついてて刃がきちんと研げていれば切れるようになりますので問題ありません。
切れ味を良くするために刃の角度を寝かせて研ぐ方がいますが、刃の調整をする際に刃と刃が噛みやすくなるので調整に慣れてからにしましょう。
刃先の光っている部分が全て無くなるまで研げたら金属の返り(バリ・めくれ)を耐水サンドペーパーでとります。
番手は砥石と同じく1000〜1500で構いません。
刃の裏を研ぐのは絶対に駄目と書いてあるサイトが多いです、その理由は刃先の裏側が丸まってしまい両刃になり、刃と刃が点ではなく面で当たってしまい切れなくなってしまうからです。
刃の裏を全く研がずに刃の返りを取る方法もありますが、慎重にやればそんなに難しい事ではないので裏刃の研ぎ方を載せておきます。
耐水サンドペーパーに水をしっかりつけて研ぎます。
下の写真の様に指を刃先の外に出さずに研ぎます。
下の写真は悪い例です。
指が刃先の外に出ています。
この状態で研ぐと初心者の方は間違いなく刃を両刃にしてしまい、鋏が使い物にならなくなります。
こまめに指の腹で金属の返りが取れたか確認して全て無くなったら、刃先の裏の磨耗して光っている部分が無くなったか確認しましょう。
光っていた部分がなくなって、金属の返りも無くなっていますので、研ぎの工程は終了です。
刃の調整をしていきます。
先ずは刃先に油を塗ります。
油を塗ることにより調整の際に刃が欠けたり、小さい金属の返りに刃が引っかかるのを防ぐ事が出来ます。
縛っていたタコ糸を解いて、刃を正位置に戻します。
上の写真の様に刃と刃を当たらないようにしたまま、下の写真の閉じた状態にします。
閉じたら握った手を緩め開きます。
この刃と刃を当てずに閉じて開く動作を4回くらい繰り返します。
こうする事によってサンドペーパーで取りきれてない金属の返りや凹凸が均されます。
最後に慎重に刃と刃を当てた状態で閉じていきます。
少しでも引っかかりがある場合はそれ以上は閉じないで緩めます。
刃と刃が強く当たってる可能性が高いので、上の写真の様に横から見て左右に少し強く開き、刃と刃の当たりを弱めます。
再度慎重に刃を閉じてスムーズに閉じたら何種類かの布で試し切りをしてみます。
全て問題なく切れた場合は完成です。
切れなかった場合は刃と刃の当たりが弱くなりすぎてる可能性がありますので、当たりを弱くした横から見て左右に開く動作の逆で内側に閉じる動作をします。
閉じるのがスムーズで刃と刃がしっかり当たる様に調整します。
それでも布がきれない場合はうまく刃が研げてないか、刃先の裏が丸まってる等の別の原因があるかもしれませんので、確認しましょう。
上の写真の様に刃が開いたままになってしまった場合は下の写真の様にU字部分を強く握ると調節できます。
これが握り鋏(糸切り鋏・和鋏)の基本的な研ぎ方、調整の仕方になります。
U字の部分は曲げたり伸ばしたりが可能になっておりますが、力をかけ過ぎたり、長期的に曲げ伸ばしをしていると、ヒビが入ったり折れる事があります。
その時は握り鋏の寿命として受け止めましょう。
失敗しやすい箇所や、疑問を持ちやすい箇所をなるべく説明するように書いたつもりですが、質問があればコメントに書き込みお願いします、返信させて頂きます。
研ぎ陣 谷中銀座
研ぎ師 福本 祐貴
Japanese kitchen knife shop ‘Togijin’
sharpener Yuki Fukumoto